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彫刻師


彫刻師はコイン製作の上で重要な役割を果たすため、古くからその名前やイニシャルがコイン上に記されることが多いです。とりわけイタリアのルネッサンス期には数多くの芸術メダルが作られ、その評価も高くなりました。それにつれて彫刻師もデザイナーに従属的なものだったものが、ひとつの芸術家として評価されるようになりました。特に有名なのはウィリアム・ワイオンやピストルッチ、モルガンなどで、これは彫刻師を代表する人々であると言われています。

ウィリアム・ワイオン(WYON, WILLIAN)


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ウィリアム・ワイオンは、英国でもっとも長い間にわたって、顕著な実績を残したコインのデザイナーと彫刻家の一族の長です。彼は1828年、造幣局の主任彫刻師としてピストルッチの後継者となり、ウィリアム四世の肖像をデザインし、そして1851年に歿するまでヴィクトリア女王のコインを含め、多くのコインをデザインしました。

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イギリス 1817年 ジョージ3世「スリーグレイシス」クラウン金貨


スリーグレイシス試鋳貨が発行されたのは今から約200年前、1817年です。ウィリアム・ワイオンは1795年の生まれですので、若干22歳にしてこの美しいデザインを仕上げたことになります。
スリーグレイシス試鋳貨は銀貨の傑作として特によく知られており、銀貨でありながらも美しさ・高い希少性(50~100枚程度)を兼ね備えることから、個体によって2千万円以上の価格で取引されています。

表面:月桂冠を載くジョージ3世の右向き肖像
裏面:左からハープ(アイルランド)、連合国旗の盾(イングランド)、アザミの花(スコットランド)がそれぞれ擬人化して手をつないだ姿


その他の代表作


英領インド 1835年 ウィリアムス4世 2モハール金貨(Restrike)

英領インド 1835年 ウィリアムス4世 2モハール金貨(Restrike)

表面:ウィリアム4世の右向き肖像
裏面:ライオンとパームの木(ヤシの木)

イギリス 1839年 ヴィクトリア女王 5ポンド金貨(ウナとライオン)

イギリス 1839年 ヴィクトリア女王 5ポンド金貨(ウナとライオン)

表面:女王の左向き肖像
裏面:月桂冠の環と王冠を頂いた4つの紋章の盾と彫刻師W.WYONの銘記

イギリス 1847年 ヴィクトリア女王ゴシッククラウン銀貨

イギリス 1847年 ヴィクトリア女王ゴシッククラウン銀貨

表面:王冠を被った女王の左向き肖像
裏面:弓上のトレッシァの中に、入念に描かれた王冠を頂いた4つの紋章の盾

ベネデット・ピストルッチ(PISTRUCCI, BENEDETTO)


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1817年 ジョージ3世 クラウン銀貨 聖ジョージ竜退治


ベネデット・ピストルッチ(1784年~1855年)は、イタリアのメダル彫刻師で、1815年に英国にやって来ると、王室造幣局の主任彫刻師としてトーマス・ワイオンを継ぎました。彼は1817年にジョージ3世のための新しいコインをデザインしました。これが後世まで英国の金貨とクラウン銀貨の裏面に描かれ続けた『セント・ジョージと龍』のデザインでした。

セント・ジョージはキリスト教の聖人の一人で、古代ローマ末期の殉教者です。龍を死に至らしめるデザインが有名です。英国造幣局(ロイヤルミント)の首席メダル彫刻師として、 首席コイン彫刻師の“ウィリアム・ワイオン”との二大巨頭が放つ19世紀の英国貨幣の最高峰となる1枚です。

ジョージ・T・モルガン(GEORGE, T, MORGAN)


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米国 1878~1921年 1ドル銀貨 モルガン・ダラー 


ジョージ・T・モルガンはイギリスのバーミンガム出身の彫刻家で、1845年に同市で誕生した後、1876年にアメリカ合衆国へと渡ります。そこで造幣局の第5代チーフ彫刻家であったウィリアム・バーバーのアシスタントとして雇われ、彫刻家として活動を開始することになるのです。
ウィリアム・バーバーは1879年にこの世を去りますが、その時点でジョージはチーフ彫刻家にはならず、引き続き一人の彫刻家としてコインの設計に没頭し、その結果として1877年から1882年にかけて作られた美しいコインのほとんどは彼の作品となりました。その中には、1878年に発行された代表作とも言える「スクールガール」ドルや1882年に発行された「シールドイヤリング」コインなども含まれています。
1917年に第6代のチーフ彫刻家を務めていたウィリアム・バーバーの子であるチャールズ・バーバーがこの世を去ると、ジョージはようやくその後を継いで第7代のチーフ彫刻家となります。それ以降は、1925年に死去するまでその職を全うしました。なお、ジョージ・T・モルガンという人物はクリケットの愛好家としても知られており、クリケットクラブを創設するなど積極的にその普及にも努めています。

モルガン・ダラー銀貨はコインの中では非常に大きな部類に属しており、またデザインが美しいこともあって、世界中のコインコレクターの間で高い人気を誇っています。具体的な大きさは直径は38mm、重量は27gほどあります。
また、コインの表面にはアメリカを代表する建造物である自由の女神の頭部の絵柄が施されており、裏面には同国の国鳥であるイーグルが描かれています。いかにもアメリカらしいデザインであるというのもこのコインが人気を集めている理由の一つであると言えるでしょう。